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What's 'IM'?―コレマデ ト コレカラ ―切実なるもの |
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『IM』が創刊以来ずっと守ってきたことがふたつあった。 発行日に遅れないこと。そして、赤字を出さないこと。 どんな事があろうとも、このふたつはずっと死守し続けてきた。だからこそカネもコネもない『IM』が何年も続き、支持され、そして成長することが出来たのだろう。 『IM』はオレのライフワーク。これで儲けようなどというハラは毛頭ない。だから集まった広告料は全て制作費に充ててきた。・・・つまり蓄えなど全くない。かといって、九州に独りフリーで生きているオレ自身にも、蓄えなどあろうはずもない。・・・ゆえに「多くの人の熱意と協力に支えられ」、まさに文字通り、「プラスマイナスゼロを死守してきた」のだ。 ところが5周年を前にした28号(01年3月発行)で、『IM』は遂に赤字に転落してしまった。 転落の要因は複合的なものだ。社会情勢の変化もあったし、自身に起因するものもあった。だがそれを列挙しても仕方あるまい。 とにかく、幾つもの要因が互いにマイナス方向に足を引っ張り合う状態。要するに悪循環ってヤツ。組織が崩れるときはどこもそんなモンだろう。スポンサーが減り、スタッフが減り、オマケに妻子までもがオレのもとを去っていってしまった。 印刷部門が順調だったのが、不幸中の唯一の幸いだった。今までに印刷したポストカードを集めた展覧会「POSTCARD DELUXE 2001」を、 3月の熊本を皮切りに、福岡、広島、北九州、岡山の5都市で開催。デザイン事務所の一線で働いてきた経験豊富なナンバー2も入り、 まさに順風満帆。これが無かったら、『IM』はこの時点で終っていただろう。 制作費軽減のためページ数も削っていき、IM29号(01年5月発行)は遂に28ページ。初期10号までのページ数にまで減ってしまった。 今や誰の目から見ても退潮は明らか。もう、創刊時の原点に回帰するしか道は無かった。 この「切実なるもの」のエピソードは、創刊以降、ずっとオレの胸中に秘めていたもの。それまで誰にも話したことはなかった。 それをここで始めて書いた。 そして赤字もさらけ出した。 同じ29号の「不乱苦雑記」(fz8「凧と舞った日」)では、さすがに比喩的な表現に留めておいたものの、我が子との別れをも書いている。 恥を忍び、屈辱に甘んじ、今までの奢りを懺悔するかの如く作った29号。 なおも続く読者の期待。しかしそれに応える術は、もう、切実さしかなかった。 3年経った今となっても、なお痛い。 (ちなみにこの29号のテーマはズバリ「親/子」。テーマを会議で決めたのは、まだ離婚の数ヶ月前・・・つまり偶然離婚と重なってしまったのだが、これもオレにとっては痛かった。)<2004.6.12記(2004.6.17一部加筆)> |
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(テキスト版) 切実なるもの 「今度飲みに行こうよ!」 それが彼女から聞いた最後の言葉だった。 彼女は当時オレが付き合っていたコのダチ仲間。その中でも「遊びまくってる」と評判だったコだ。某ブランドの販売スタッフをしていて、オレが仕事で店に行くたびに飲みに行こうと誘ってきた。 「ああ、今度行こうねー。」 いつになるか分からない「今度」を繰り返すこと3ヶ月。突然、彼女は店から消えた。ひとり暮らしのアパートで、彼女はガスの栓をひねってしまった。いつも明るくて、ダチもいっぱいいて、バリバリ遊びまくってて・・・。そんな彼女の人知れぬ孤独と挫折に、オレは最後まで気付かなかった。 遊んでるヤツほど、胸の中に切実な叫びを持っている。街で生きているヤツならば、誰でも知ってるアタリマエ。でもそれを表現することを知らない。表現できる場所もない。・・・・・・そして今から5年前、オレはIM(identity market)を創刊した。 バカでアホで不器用で、そのくせ女(男)だけには手が早い。ウチはそんなロクデナシの集まりだ。読者にもそんなロクデナシが多い。(失礼っ!)だがそんな不器用なヤツら。純粋じゃなくても切実なヤツらが、このIMを読んでくれ、支えてくれている。IMを創刊して本当によかったと思う。 だが、実はいま、IMは創刊以来の危機にある。金銭的な問題だ。残念ながらオレには金が無い。オレひとり生きるのに精一杯の金しかない。赤字こきながらヘラヘラ作るような真似は到底出来ない。 赤字になったら即廃刊。そんな状況の中でも、何とかIMを続けてきた。多くの人の熱意と協力に支えられ、プラスマイナスゼロを死守してきた。 だが、3月から赤字に転落した。 貧富の格差が拡大しつつある今の日本。IMを支えるロクデナシたちは経済的に追い込まれる一方なのだ。こんなことは書きたくないが、今のままでは秋まで持たない。 IMを求める人は今でもどんどん増えている。ますます必要とされていると痛感する。 結局ウチしかないのだ。切実な叫びの行きどころは。 正直言って休刊・廃刊も考えた。だがやはりウチが倒れるわけにはいかない。 何年もやってりゃピンチだって訪れる。でもこういう時こそ見せどころ。 ピンチに強いロクデナシの晴れ舞台。 がんばるよ。 決して純粋じゃないけれど切実なる全てのもののために。 幸い彼女は一命はとりとめたらしい。 だが親が阿蘇の故郷に連れ帰った後、彼女とは一切連絡がつかなくなってしまった。 その後の彼女は誰も知らない。 今も元気に生きている。 そう、願う。 そう願いながらIMを作り続ける。 それしか、できない。 2001.4.20. 宮原 春萌(identity market代表) <『IM...identity market 29』(2001.5.1.発行)より転載> |
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