HOME PAGEレレレノレコード > BRIAN ENO 「AMBIENT 1 MUSIC FOR AIRPORTS」

レレレノレコード

BRIAN ENO Ambient #1

BRIAN ENO

AMBIENT 1
MUSIC FOR AIRPORTS


1978 E.G.Records
EGED 17

1978 PVC Records (Ambient Records)
PVC7908(AMB001)


<TRACKS>
-Side 1-
1/1 [16'30"]
2/1 [8'20"]
-Side 2-
1/2 [11'30"]
2/2 [6'00"]
 音楽は集団を対象とする。有史以前より人間は音楽を奏でてきた。神を崇め奉るため。気分を高揚させるため。みんなの動作を揃えるため。戦の合図を送るため。歴史を子孫に残すため……。音楽は大勢の人に同じ影響を与えるために演奏されてきた。ワーグナーの歌劇も、ディランのギターも、パチンコ屋の軍艦マーチも然りである。

 ところがここにブライアン・イーノという、気まぐれで音楽の世界に入ってきた男が登場する。70年代初頭、友人に誘われるままに、当時はグラムロックバンドだった「ロキシー・ミュージック」に加入。ろくに楽器も演奏できない彼だったが、派出好きが幸いして一躍スターになってしまう。間もなく「ヴォーカルの自分より目立ちすぎ」という理由でリーダーのブライアン・フェリーにクビにされてしまうが、味をしめたイーノはそのまま音楽の世界で活動を続ける。ここからイーノの快進撃が始まる。その成功の理由を一言で言えば、「ポリシーを持っている他のミュージシャンがあーだこうだ言ってる間にオイシイところを持っていった」である。

 そして1978年、イーノはこのアルバム「AMBIENT 1~MUSIC FOR AIRPORTS」によって、音楽シーンに「AMBIENT」という革命を起こしてしまう。聴き手が自由に解釈できる音楽、あるいは聴き手が自由に解釈するという音楽の聴き方。すなわち個人を対象とした音楽である。イーノはそれに「AMBIENT MUSIC(環境音楽)」という造語をつけて売り出し、そしてブームを巻き起こすほどヒットさせてしまったのである。実は、このようなサウンドも考え方もたいして目新しいものじゃあない。ジョン・ケージを持ち出すまでもなく、「AMBIENT」な音楽を演ってた連中なんてイーノ以前にもいくらでもいた。しかし頭でっかちな彼らが理論武装している間に、イーノは楽器も出来ないのにロックを始めたのと同じノリで「AMBIENT」をポンと世の中に出してしまい、そして、またもやオイシイ油揚げをかっさらっていったのである。

 このアルバムがその後の音楽シーンに与えた影響は計り知れない。集団ではなく個人を対象とする革新的な音楽を、一気にポピュラーミュージックにしてしまったのだから。このアルバムがなかったら、あのサティさえも過去に埋もれたままだっただろう。もちろん、ウィンダム・ヒルからアンビエント・ハウスまで、また「解釈は聴き手にまかせる」と答えるミュージシャンのほとんども、このアルバムの影響下にあるといっていいだろう。
 ちなみに、一番有名なA面1曲目の「1/1」でピアノを弾いているのはイーノじゃなくて、あのロバート・ワイアット。知ってた?(HARUM0)

<「IM... identity market 10号」(1998.3.1.発行)より転載>


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