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不乱苦雑記 frank zakki fz3
「神の国」

 6月4日。日曜日。午後1時。
 広島市。宇品広島港。みなと公園。

 昨日から「ゆかた祭り」とか何やらで街中が騒々しいんで、喧騒を逃れてここまでやってきた。踊り騒ぐのは本来嫌いじゃない。イベントも好きだ。だが、お祭りだけはどうも馴染めない。恐らくは故郷に祭りの風習がなかったせいであろう。祭りの空間に漂う独特の血の濃さ・・・・・・ムラ社会的なつながりが縦横無尽に絡み合うのを息苦しく感じてしまう。(まあ、今朝まで「ゆかた」のコと飲み歩いていたオレに、祭りの文句言える筋合いはないかもしれんが・・・)

 日曜午後の芝生公園はひたすらのどかだ。
 所々に満開のシロツメ草が生えている。
 最近嗅覚を失いかけているので全く何も感じないが、
 あたり一帯、シロツメ草の匂いに満ちてるに違いない。
 海から陸から、様々な音が聞こえてくる。
 風が涼しい。
 太陽がまぶしい。

 Z

 「神の国」
 森首相の一連の発言。この発言が日本に、与党に、身内に与える悪影響を計算出来ない無能ぶりも情けないが、発言に対する無頓着・無責任ぶりは、もう情けないを通り越し日本人として恥ずかしささえ感じてしまう。

 相手によって発言を変えるな!
 正々堂々言えないのなら最初から言うな!
 発言した以上は最後までスジ通せ!

 たとえそれがタテマエだろうがホンネだろうが、いったん発言した以上、それは立派な主張である。当然、責任もとらなくてはいけない。ましてや発言が商売の政治家。ましてや国を代表する総理大臣。タテマエとホンネがあることを分かって欲しいというような、甘えた態度に同情する余地はない。

 何でこんな軟弱なヤツが首相やってるんだ!
 ・・・・・・と思ったら野中サン、
 「まだ生まれたばかりの赤ん坊なんだから大目にみてやってくれ」

 は?
 首相は赤ん坊?

 Z

 日曜午後の芝生公園はひたすらのどかだ。
 いつの間にか家族連れがあちこちにいる。
 レジャーシートに弁当を広げ、我が子を芝生で遊ばせている。
 判で押したような同じ光景が、
 判で押したような同じ幸福が、
 満開のシロツメ草のごとく芝生に点在している。
 「今後の日本は、どうあるべきだと思われますか?」
 「今後の日本のために、あなたは何をすべきだと思われますか?」
 いや、その前に、
 「首相が赤ん坊だと言っても通用してしまう、今の日本の国民、マスコミ、政治についてどう思われますか?」
 点在する子連れの親達一人一人に尋ねてみたくなってきた。

 Z

 最近、森首相は「勝手な発言」を禁じられているらしい。
 まあ、あれだけ無責任な発言を繰り返しちゃ、もうしょうがないか?
 でも・・・・・・発言できない政治家? 発言できない総理大臣?
 沖縄サミットどうするん?

 Z

 目の前の港には、次々とフェリーが入港してくる。
 ターミナルの脇には、路面電車が頻繁に出入りしている。
 古びたフェリーターミナル。おそらく20年、30年も前から、同じ光景が繰り返されているのだろう。
 ターミナルが老朽化してしまったこと以外は・・・。

 あちこちの家族連れは、フェリーにも路面電車にも全く目を向けない。
 見飽きたのか? それともはじめから関心が無いのか?
 ひたすら我が子と芝生で遊ぶ。半径5メートルの小さな幸せ。
 我が子以外には全く興味がないのだろうか?

 海から陸から、様々な音が聞こえてくる。
 風が涼しい。
 太陽がまぶしい。

 Z

 熊本に帰ってきた。

 朝鮮では南北会談。台湾では政権交代。どんどん政治が動いている。
 中国もロシアも手回しが早い。
 ハタミ、バジパイ、ワビド、マハティール・・・・・・
 政治家が世界を動かしている。
 グローバル化が進む現代。政治家の役割は重要になるばかりだ。

 「タテマエ」でも「ホンネ」でもない。
 必要なのは生きた言葉。重みのある言葉。
 そして自分の言葉に責任が持てる人。

 今から5日後。
 6.25総選挙。
 日本の運命、アナタの運命、オレの運命がこの時決まる。
 「神の国」に住む、
 1億人の「わたし」の手によって。


2000.6.20. 宮原 春萌(identity market 代表)
<「IM... identity market 24号」(2000.7.1.発行)より転載>

 

●解説●
 当時はまだ森総理が誕生して2ヶ月半。小渕総理病死後の密談によって誕生したこの新総理は、相次ぐ問題発言と釈明によって早くも総理大臣としての資質を問われる立場となっていた。もちろん後で知ったことだが、これを書いたまさにその日にも、有名な「寝ててしまってくれればいいが」発言があり波紋を起こした。
 森総理の資質が争点になった総選挙だが、投票時間が2時間延長されたにもかかわらず、彼の期待通り投票率は伸びなかった。公明党という組織票を得た自民党は勢力を維持し、森総理も続投。そしてその後も問題発言・行動は続きマスコミ各社発表の支持率も10%を割るに至り、彼は身内の自民党からも見放されるようになった。それでも結局彼は翌年春まで生き残り、それを許した我々日本人は世界の笑いの種となったのである。(2004.2.23)

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